在宅で働き始めて、最初に手が止まったのが「住所」でした。
仕事の場所は自宅です。家族が暮らしている家です。その住所を、会ったこともない人が見られる場所に載せる。考えるだけで落ち着かない気持ちになりました。
同じところで止まっている方に、まずお伝えしたいことがあります。そもそも住所を公開する必要がない人も、けっこういます。そして必要な場合でも、自宅を出さずに済む方法があります。
この記事の流れ
- そもそも自分に公開義務があるのかを確かめる
- 義務がある場合、自宅を出さずに済ませる3つの方法
- バーチャルオフィスを選ぶときに見るところ
まず、住所を「公開」する場面と「提出」する場面を分ける
ここが混ざっていると、必要以上に不安になります。整理するとこうです。
誰でも見られる(公開)
- Webサイトの「特定商取引法に基づく表記」
- 名刺、パンフレット
相手にしか渡らない(提出)
- 開業届、確定申告書
- 請求書、業務委託契約書
- クラウドソーシングの本人確認
不特定多数の目に触れるのは、上のグループだけです。税務署に出す書類や、契約するクライアントに渡す請求書は、公開されません。ここを分けて考えるだけで、悩む範囲がぐっと狭くなります。
そもそも、あなたに表示義務はありますか
「特定商取引法に基づく表記」は、すべての在宅ワーカーに必要なものではありません。
この表記が義務になるのは、通信販売など特定商取引法が定める取引をしている場合です。ネットショップ、有料の講座やコンテンツ販売、自分のサイトからの申し込み受付などが当てはまります。
義務が生じやすい人
- 自分のサイトやSNSから、講座・コンテンツ・商品を販売している
- ネットショップを開いている
- 自分のサイトから直接、有料サービスの申し込みを受けている
義務がないことが多い人
- 企業から業務委託で仕事を受けている(ライター、事務代行、デザインなど)
- クラウドソーシング経由で仕事をしている
- 広告収入だけのブログを運営している
企業を相手にした取引は、特定商取引法の適用外とされています。つまり「消費者に何かを売っている」のでなければ、この表記のために住所を公開する必要はありません。在宅ワークを始めたばかりの方の多くは、まだここに当てはまらないはずです。
住所の悩みでバーチャルオフィスを契約する前に、まず自分がどちらなのかを確かめてください。不要な月額を払わずに済みます。
表示が必要な場合、何を書くことになるのか
義務がある場合、事業者について表示するのは次の3つです。
- 氏名(名称)
- 住所
- 電話番号
気をつけたいのが氏名です。消費者庁は、個人事業者の場合は戸籍上の氏名または商業登記した商号が必要で、通称・屋号・サイト名では認められないとしています。「おうちワークの保健室」のような屋号だけでは足りない、ということです。
住所は「現に活動している住所」、電話番号は「確実に連絡が取れる番号」であることが求められます。使っていない番号を載せたり、意図的に電話に出ない状態にしたりするのは認められません。
私書箱は使えません
郵便物を受け取るだけの私書箱は「現に活動している住所」とはみなされません。住所を借りるなら、この違いは押さえておいてください。
自宅住所を出さずに済ませる3つの方法
方法1 販売プラットフォームの非公開機能を使う
BASE、STORES、minneなど、個人向けの販売プラットフォームには住所を非公開にできる機能が用意されていることがあります。追加費用がかからないので、当てはまるならこれが一番早いです。
ご自身が使っているサービスの設定画面を、まず確認してみてください。
方法2 「請求があれば遅滞なく開示します」と書いて省略する
意外と知られていませんが、住所と電話番号は、条件を満たせば表示を省略できます。
消費者庁の通信販売広告Q&Aによれば、次の2つを満たす場合は省略が可能とされています。
- 消費者から請求があれば、書面またはメールなどで遅滞なく提供する旨を広告に表示していること
- 実際に請求があったとき、遅滞なく提供できる体制を整えていること
ここでいう「遅滞なく」とは、お客様が申し込むかどうかを決める前に、十分な時間の余裕をもって渡せること、という意味です。請求されたら本当に自宅住所を伝えることになるので、そこは覚悟が必要です。「隠せる」のではなく「常時掲示しなくてよい」ということですね。
お金はかかりません。ただ、請求への対応を自分で回す必要があります。
方法3 バーチャルオフィスの住所を使う
月額を払って事業用の住所を借りる方法です。同じQ&Aで、一定の条件を満たせばバーチャルオフィスの住所と電話番号を表示してよいとされています。
満たすべき条件
- その住所・電話番号が連絡先として機能することについて、あなたとバーチャルオフィス運営会社の間で合意があること
- 運営会社が、あなたの現住所と本人名義の電話番号を把握していて、確実に連絡が取れる状態になっていること
つまり、住所を借りれば自動的にOKというわけではありません。「特商法の表記に使える」と明記しているサービスを選ぶことが大切です。契約前に、その一文があるか必ず確認してください。
バーチャルオフィスを選ぶときに見るところ
大きく「立地」「サービス」「価格」の3つですが、在宅で働く私たちの場合、優先順位は少し違うと思っています。
- 特商法の表記に使えると明記しているか(これが最優先)
- 郵便物の転送はどうなるか(頻度、追加料金、実費負担)
- 電話番号は借りられるか(住所だけのプランも多い)
- 法人登記に使えるか(将来法人化するなら)
- 立地(一等地である必要は、実はあまりありません)
よく「都心の一等地の住所が持てる」と宣伝されますが、在宅ワーカーにとって本当に効くのは立地よりも郵便物がちゃんと届くことです。契約書、税務署からの通知、クライアントからの書類。これが滞ると仕事が止まります。
転送が月1回のプランだと、急ぎの書類に気づくのが3週間後、ということも起こり得ます。転送頻度と、それがいくらのプランなのかは、契約前に必ず確認してください。
逆に、住所を表示する目的だけで、郵便物を受け取る予定がないのであれば、転送の条件はほとんど気にしなくて構いません。その場合は最小限のプランで十分です。まず自分がどちらなのかを決めると、選ぶのがぐっと楽になります。
私の場合
私がバーチャルオフィスを借りたきっかけは、メルマガの配信でした。
メルマガを出すには、配信元の住所を明記する必要があります。読者に届くメールの末尾に、自宅の住所が並ぶことになる。それはさすがに無理だと思って、住所を借りることにしました。
選び方は、正直に言うと「ネットで探して、とにかく安いところ」でした。
当時いくらだったのかも、実はもう覚えていません。それくらい、安いかどうかしか見ていなかったということです。
今ならこう選びます
この記事の前半で「特商法の表記に使えるか」「郵便転送はどうなるか」を先に見てくださいと書きました。あれは、当時の私ができていなかったことです。値段だけで決めると、あとから「これ、使えるんだっけ?」と調べ直すことになります。最初に確認しておくほうが、結局は早いです。
その後、契約先は変えました。レゾナンスの更新時期に「もっと安いところはないかな」と探し直したところ、GMOオフィスサポートのほうが安かったからです。今はそちらを使っています。
……お気づきかもしれませんが、結局また安さで選んでいます。ただ、2回目は自分の使い方がはっきりしていました。
私は郵便転送を使っていません。必要なのはメルマガに載せる住所だけで、そこに郵便物が届く想定がないからです。だから転送の頻度も、オプションの充実度も、私には関係がありませんでした。
つまり「安さで選んでいい人」と「そうでない人」がいるということです。私は前者でした。もし契約書や税務署からの書類を受け取る住所として使うなら、話はまったく変わります。
登録は個人名にしています。屋号ではなく個人名で登録しておくと、書類まわりで整合が取りやすくなります。
数年使ってみて思うのは、住所を借りるかどうかで悩んでいた時間のほうが長かったということです。必要だと分かってから決めれば、手続き自体はあっさり終わります。悩む前に、まず自分に義務があるかを確かめる。それが一番の近道でした。
住所を守ることは、家族を守ること
自宅住所を公開すると、その情報はあなただけのものではなくなります。一緒に暮らしている家族の情報でもあるからです。
在宅で働くというのは、暮らしの場所と仕事の場所が重なるということです。だからこそ、線を引けるところは引いておきたい。神経質すぎるということはないと思います。
やることを整理すると、こうなります。
- 自分に表示義務があるか確かめる。なければ、ここで終わりです
- 販売プラットフォームを使っているなら、非公開機能を探す
- それでも必要なら、省略ルールかバーチャルオフィスを検討する
この順番で見ていけば、多くの方は月額を払わずに解決できるはずです。
📋 バーチャルオフィスを検討している方へ
※この記事は、消費者庁「特定商取引法ガイド」および「通信販売広告Q&A」の内容をもとに、2026年時点の情報でまとめています。私は弁護士ではありませんので、個別の判断が必要な場合は専門家にご相談ください。制度は変わることがあるため、実際に手続きされる際は消費者庁の最新情報をご確認ください。









